老い

首くくり栲象

「首くくり栲象」というパフォーマーを知った。ゲッツ板谷の『そっちのゲッツじゃないって!』というエッセーに出ていた。
彼は、自宅の庭で実際に首を吊ってぶらぶらするパフォーマンスを定期的に演じてきた。

庭の木にはロープがぶら下げられている。のっそりと登場した彼は、ゆっくりとロープの周りを一周すると、ロープ手前の台に乗り、おもむろに首にロープをかけ、台から足をはずして首を吊る。
風が吹くと微妙にロープが揺れて、ギシギシと軋む音だけが際立つ。

約3分。ひょっとして本当に死んでしまったのではないかと心配になるころ、彼は両手を上げてロープを首から外すと、飛び降りる。そしてゆっくりと視界から消え去っていく。

10分ほどのパフォーマンスを、ただただひたすら見入ってしまった。背中がぶるぶる震え、言いようのない不安が心を占めている。ほんの数ミリ、ロープのかけどころを間違えれば死んでしまうだろう。
揺れるロープに身を任せた彼は、生死のはざまを不安定なまま揺れ動く自分自身の姿かと錯覚する。
死というものを、これほど身近に、これほど恐ろしいと実感したことはない。動画で見るだけでも圧倒的な迫力を感じるのだから、目の前で演じられたら、その衝撃はいかばかりだったろう。

首くくり栲象は、昨年3月、肺がんで亡くなったそうだ。享年70歳。死の直前まで首吊りのパフォーマンスを続けていたという。

これ以上、語るべきことははない。動画は以下。
https://www.youtube.com/watch?v=RhF-qhyzoEM