グルメ

衒学趣味

「主義」ではなく「趣味」だよ。
こう指摘されて覚えた言葉が【衒学趣味】だ。知識をひけらかすことをいい、どちらかといえば批判的・否定的に使われることが多い。

あちこちの居酒屋を訪ねる番組で有名な吉田類(『酒場放浪記』)と、太田和彦(『新・居酒屋百選』)を見比べて表すれば、太田は衒学趣味の人、ということになるだろう。

太田和彦には酒や料理、店の佇まいに至るまで確固たる価値基準がある。
お燗の温度や酒器も、合わせるつまみによってこれが正解という価値観があり、自分の基準にマッチしたと感じれば絶賛する。
そうでないとき、さすがにけなすようなことは言わないが、露骨に表情に出てしまうので、見ているものには丸わかりだ。

昨夜の『新・居酒屋百選』で太田が訪れたのは輪島。そこで好きな酒に出会った。
「夏酒 無濾過生」。蔵元は農口尚彦研究所。太田はこれをあえて燗にしてもらう。

「神聖な香り。位が高い。一枚上手。品が違う。甘からず、辛からず、うますぎず、香り強すぎず。すべておだやかだけど、まとまったものはとても強いものになっている。」

うまい表現である。謳うように太田が語ると、詩を聞いているようだ。
しかし、この後にかますのだ。 。

「燗は適切。さっきより1度低いくらいかな。」

これこれ。さっきより1度低いって。
こんな情報は、視聴者には聞くだけ無駄な情報である。1度低いことを私(太田)はわかるんだ、というひけらかししか、こちらには伝わってこない。

いつも、せっかくの太田の豊かな表現力にいい気分に浸っていると、突如繰り出されるこのかまし。
太田和彦に衒学趣味が無ければ、もっと好きになるのになあ。