映画

加藤嘉のこと

「青幻記 遠い日の母は美しく」という映画を観た。
故郷である沖永良部島を、30年ぶりに訪れた男(田村高廣)の、若くして死んだ母(賀来敦子)への想いを、回想形式で描いた作品だ。

メインキャストであるのに、賀来敦子という女優のことは全く知らなかったので、何気なく録画しておいた。なかなかの美人女優だった。
ググってみると、賀来敦子は1963年から73年までのわずか10年しか活動していない女優だった。本作以外では「白と黒」(銀座のバーの女C)、「儀式」(桜田律子役)、「われら青春」だけが載っていた。
「われら青春」といっても日テレの青春ドラマではなく、東芝日曜劇場での連続ドラマだという。途中で打ち切りになったらしい。

で、加藤嘉である。この映画に一瞬出ていたことで、彼とのちょっとしたエピソードを思い出した。彼とは一度共演したことがあるのだ。
1975年1月3日放送のNHK少年ドラマの新春スペシャル「春の太鼓」。井原西鶴の浮世草子『本朝桜陰比事』を原作にした時代劇で、加藤嘉はお奉行役だった。
登場するのも1シーンのみで、WIKIには彼の出演作としても記録されてはいない。

ちょい役だったせいもあろうが、加藤嘉は稽古には姿を現さなかったような気がする。
スタジオに現れると、現場の空気がぴリっとした。床几に腰かけて裁きをする役なのだが、セリフが入っていないようで、床に台本を広げて置いていた。
台本とは違う言い回しだったりとかおぼつかないような口調でもたついている様子が見て取れたが、それでも本番になると、さすがに存在感は抜群で、シーン全体を支配してしまうのには恐れ入った。

付き人がそばに控えて、こまごまと世話を焼いていたが、ひょっとすると奥様だったかもしれないと、今にして思う。

「砂の器」や「男たちの旅路」など、出演作品を思い出すたびに、加藤嘉の独特なせりふ回しと、眉毛の異様に太い独特の風貌はすぐに思い浮かべることができる。

加藤千代さんという娘さんが女優をなさっていることを初めて知った。「わが父の愛と修羅」という本も出されている。
早速、読んでみることにしよう。