テレビで見た

お前はもう死んでいる。

アナザーストーリーズ「東海村臨界事故 終わらない闘い」を見た。
硝酸ウラニル溶液を沈殿槽にバケツで流し込む作業をしていた従業員の2人が亡くなった。そのうちの一人が死に至るまでの過程を、治療に当たった医師と、病状写真によって再現していく。
それは非常にショッキングだった。

人体が耐えられる放射能レベルの6万倍物放射能を浴びて、彼は病院に運び込まれてきた。しかし、その当時の写真に写った彼の外見は、全くの無傷に見える。意識は明瞭で、受け答えもはっきりしており、医師も助かるかもしれないとの希望を持ったそうだ。

ところが東大病院に転院されて検査を行ったところ、染色体に異常が見つかる。体内にある染色体はすべて破壊されていたのだ。
人体は染色体に組み込まれた遺伝子情報によって新しい細胞を作るようになっている。
染色体が破壊されたことで、彼の体では新しい細胞が作れなくなってしまったのだ。

影響は徐々に出てくる。
まず、白血球が急激に減少してくる。皮膚は日焼けした状態に変色し、やがてただれてくる。古い皮膚から新しい皮膚への代謝が行われなくなったせいだ。
皮膚はすべてはがれてなくなり、むき出しになった体からは体液がにじみ出てくる。

臓器も次々と壊れていく。医師たちはほとんどなすすべもなく、対処的な延命治療を行うだけだ。しかし、事故から83日後、彼は多臓器不全により亡くなってしまう。

外見上全く無傷で、内臓にも疾患がない状態の人間が、物理的な刺激もないのになぜか焼け焦げ、ドロドロに解けていってしまうように見える映像は、あまりにもにショッキングで恐ろしい。
交通事故とか、癌とか脳溢血とかであれば、死に至る過程を想像することは容易である。
しかし、放射線被ばくがもたらす過程は想像を絶する。

「お前はもう死んでいる。」
北斗の拳でケンシロウがつぶやいた数秒後、いきなり内臓が破裂して腹を突き破るように吹き出て死んでいく、あのシーンが頭をよぎる。

体の一部で発症した病気が原因で死ぬのではない。皮膚、血液、臓器らすべてが同時多発的に衝撃を受けて崩壊していく様は、首都直下型地震で各地に一斉に起きる災害のイメージにも重なる。
きっと、この先も何度も同じ映像が頭によみがえり、その度にうなされることになることだろう。