大相撲

刃力の馬力

大相撲九州場所である。今日は3日目。序の口経営者はもちろん序の口の取り組みは見逃さない。 AbemaTVでは本場所の取り組みはすべて中継してくれている。

序の口の取り組みは早ければ8時半には始まる。観客はちらほらしか見当たらないが、最初の1番から、熱心なファンの声援が飛ぶ。気のせいかもしれないが、一番元気のいい声援を送っている女性、毎場所、しかも毎日来てないか?

まあ、自分も、暇はともかく金に余裕があれば、本場所の間は地方でも、連日朝から序の口の取組みだけを観戦するなんていう贅沢をしてみたい。

今日注目の一番は「刃力」対「獅子丸」。取り上げたいのは刃力の方。錣山部屋所属の力士である。彼は怪我による休場が長引き、序の口からも陥落。番付外とされてしまったにもかかわらず3年2か月に及ぶ期間を経て再出世を果たしたという執念の力士なのである。

刃力は平成17年3月に初土俵を踏んだ。バンと当たって力強く前進する相撲で、3場所連続で勝ち越すなど順調に出世し、わずか1年で三段目まで昇進した。11月場所には三段目42枚目まで昇進した。刃力にとって現在までの最高位となっている。 刃力はその後、相次ぐ怪我に悩まされることとなる。

平成19年5月場所から3場所連続全休。序の口から番付外に陥落してしまう恐れのあった11月場所には1番だけ出場して白星を挙げ、序の口にとどまった。しかし、その後数年は番付を上げては怪我の繰り返し。成績も一進一退で序の口と三段目を行ったり来たりで、苦しい土俵を務めていた。

平成28年7月場所の初日を休場。西序の口17枚目まで番付を落とした11月場所を全休したことで、ついに番付外に落とされてしまった。年はいつか30歳と迎えるところで、力士としてはベテランの部類に属する。並の人間ならば引退したことだろう。

しかし刃力はあきらめない。令和元年7月場所で前相撲として土俵に上がり、再出世を果たしたのだ。

自分が序の口の取組から大相撲を見るようになったのはまさにこの7月場所から。 AbemaTV では前相撲も視聴することができる。7月場所の前相撲で刃力の相撲を初めてみた。

なんの知識も持たないまま、初めて見た前相撲。初々しい少年力士に交じると、年配の力士の姿があった。それが刃力だった。

彼はしこが踏めないようだ。かたちばかりに足を10センチほど上げるだけだ。蹲踞も完全にはできないのか、中腰状態からすぐに立ち上がってしまう。やはり中腰のまま精いっぱい両手を伸ばしてやっと両こぶしを仕切り線に置くや、ぎくしゃくと立ち上がった。どう見ても万全とは思えないの体をかろうじて前へ運ぶ姿に、目を釘付けにされてしまった。

刃力は前相撲を2番取った。勝ち負けは忘れてしまったが、すぐにググって上記の事情が判明したのだ。

れっきとした序の口力士として、刃力が復活した9月場所自分は両国国技館に足を運んだ。11日目。刃力の対戦相手は今日と同じ「獅子丸」。前へ前へと前進し、そのまま寄り切った。

股関節が変形してしまったという刃力の土俵は痛々しい。しかし、勝っても負けても、勝負の後の一礼はいつも丁寧である。

潜在的な能力を持ちながら、不本意な番付で相撲を取ることを余儀なくされている刃力。彼が相撲にチャレンジし続ける生き様は、すでに関取級の迫力で周囲を圧倒しているのだ。