序の口経営者ってやつは

初めましてのご挨拶

序の口は大相撲の番付で一番下の階級である。これより下の地位はない。

体格基準をクリアし、前相撲を取りさえすれば、だれでも序の口に名前を連ねることはできる。勝ち越せば序二段に昇進する。

以後、才能に恵まれ、努力を重ねたものは横綱にだってなれる。もちろん、負け越せば番付は下がるが、序の口は最下級の地位であるから、落とされることはない。

厳密には本場所を休場してしまうと番付外に落とされてしまうが、一番でも出場して相撲を取れば序の口にとどまることができる。もちろん、自らの非才を悟り、引退すればそれまでである。

さて、序の口経営者とは何か。

自ら起業し、会社を設立して社長となれば、だれでも序の口経営者になれる。順調に売り上げを伸ばし資本を拡大すればいずれは上場企業として一流企業に名を連ねることも可能である。

一方、売り上げが低迷し赤字が続けば、廃業や 倒産に追い込まれてしまうこともある。業績がぱっとせず、序二段経営者にすらなれず、かといって廃業することも倒産することもなければその経営者は序の口経営者である。

まぎれもなく私は序の口経営者である。平成元年から今に至るまで、負け越し続きで勝ち越した記憶はない。しかし、いまだに経営者の地位にいる。

経営能力に恵まれず、かといって人並みの努力すら継続できず、他人の助力や悪運に恵まれて今に至っているクズである。

それでも人間である以上は生活がある。誰の役にも立たず、あまり幸福とも思えないが、だらだらぐずぐずとした日常には、それなりの楽しみや喜びがあったりする。

万年序の口経営者の日常をさらすことは、それなりに恥ずかしいことではあるが、人生に絶望したり、ストレスフルな日常に押しつぶされそうな誰かがたまたまここを訪れて、こんなやつでも生きているのかと、溜飲を下げたり、まだ下があることにほっとしてもらえるのならば、存在意義はあるだろう。

序の口経営者の日常は怠惰である。日がな一日ソファに横になってはだらだらとテレビを眺め、うとうとと居眠りをし、というのが日常である。

興味の赴くままに膨大な番組を見散らかし、時に感想をぶつぶつつぶやくこともある。

夏の高校野球の地区予選、大相撲の幕下以下の力士への思い入れを吐き出すこともあるだろう。

経営者として何を考え、どのように行動し、いかにうまくいかなかったかという失敗談には事欠かないので、気分が良ければ恥をさらすこともあるはずだ。

当面は、レイアウトや構成を依頼した娘一人が読者だと思うが、継続は力なり。

それは序の口経営者歴30年の私が一番よく知っているのである。


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